日産リーフをレンタルした!(下)リーフの行き着く先は そして…

日産のEVリーフをレンタルした。群馬からはるばる東京へ! 意外にも航続距離が続いたのでレインボーブリッジまで渡ってしまった。後編はいよいよ帰り道です。

いざ帰還

友人を送りに秋葉原まで行ったところで17時。返却期限は20時なので、そろそろ帰らないといけない。普段の自分の車ならまだ余裕があるけど、念のため高速を使って一直線に帰ることにした。1日のドライブですっかりリーフのも慣れてしまい、ケータイのハンズフリーiPodでの曲再生を使いつつ。航続距離は140km、残りの距離は110kmぐらい。行きの感じからすればまだ余裕はある。

首都高→外環→関越へ

カーステレオを使いながら軽く走っていると、本当に普通の車と変わりがない。速度が上がってくると普通の車でもエンジン音よりロードノイズが大きくなってくるせいでもある。あるいは静かさになれちゃったかな?

ただ速度が上がっても加速性能は十分で、流れをリードすることもできる。試しにやってみるとキーンという加速音とともにスッと前に出ることができる。これは快感! F-ZEROみたいだぞ! エンジン車だとグオーって音に遅れて加速感が来る(特にCVT車)から、この反応速度は圧倒的だ。


って電気を無駄遣いしている場合ではない! これで5kmは航続距離が減ったような… せっかくのパワーもバッテリー容量の限界のせいで満足に生かすことができないなあ。今のを取り返すために一番左の走行車線に戻って我慢の走行をしよう。エコモードにしてひたすら、我慢だ。

「目的地に到着できない可能性があります」

関越に入ってしばらくしてから聞こえてきた音声がこれ。




…マジ?
充電スポットを探すように促される。
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たくさんあるように見せかけて、これ全部日産のディーラーなんだよな…。一応暗い円のふちギリギリに目的地が入っていて、予想航続距離のままなら到着できそうにも見えるが… 道が完全な直線でないことを考えると実はかなりヤバいのかも。ヘッドライトを付けたぐらいでこんなに縮むか???


速度が時速80km程度なら、ハイブリッドカーはかなり理想的な燃費で走行することができる。空力に優れる初代インサイトなんかは時速100kmでもリッター30kmは余裕で達成するのだ。リーフがいくら普通のハッチバックの形をしていて空力が劣るとしてもこの航続距離の低下は解せない…?


いやおそらくエンジン車とEVは燃費(電費)に対する特性が全く異なるのだ。エンジンはある一定の回転数の時もっとも効率が良くなる。その美味しい回転数をうまく使うために、ギアを組み合わせた複雑なミッション(AT MT CVT)を積んでいるわけだ。発進する時はエンジンの回転数は少ないから、そのままでは発進するための力(トルク)が足りない。低速側に切り替えて発進する。*1高速道路はギヤを高速側に合わせて、タイヤを速く回してもエンジンの回転数が少なくて済むようにする。つまり高速では沢山走るけどエンジンの回転も少ないので燃費は良くなる。加速減速の無駄もないしね。


一方EVはミッションがない。ラジコンとかミニ四駆にはギアはあったけど、速度によってガチャガチャ切り替わるような仕組みはなかったはず。モーターは0回転から最大のトルクを発揮することができるから、発進時に低速ギアで助けてあげる必要はないのだ。じゃあどうやって高速に走るかと言えば? そう、電気を沢山流せばいいのだ。つまりEVは速度を出せば出すほど電気の消費が大きくなる。大電流を流すと熱も発生するし、抵抗も馬鹿にならない。


リーフは高速道路走行が苦手なのか… うーん、困ったぞ。


緊急事態である。花園で降りてディーラーを探すしかない。それまではトラックの後ろに付くぞ! 時速70kmで走っているトラックを発見。後ろに付く。しかしそれでも航続距離は改善してくれない。ギリギリのまま推移する。と嵐山PAでトラックが降りてしまった…。 自分が先頭になりつつ、定速走行を心がける。油断すると時速90kmぐらいまで簡単に上がってしまうのだが、この性能が今は恨めしい。

再充電の望みは

とりあえず道の駅かわもとに着いた。ここで作戦を考えよう。最寄の充電スタンドは… やはりこの地域日産のディーラーしかないようだ。しかも熊谷店しかないのか。さて、日産のディーラーは何時までやっているのだろうか? 自分のいつも行ってるホンダは20時だけど。30分ぐらい急速充電して再度高速を飛ばせば時間も大丈夫だし…


というこの無計画かつ杜撰さが悲劇を招いてしまうのである。電気自動車に乗ろうとするみんなは充電スタンドの位置や電気自動車の特性をしっかりおさえて、余裕を持った計画をしようね! 時間ギリギリ・電池もギリギリは御法度だぞ! 


ごめんなさい。日産のディーラーは19時までだったようだ。もうすぐ閉店時間を迎えようとしている。花園から1時間もあれば高崎まで余裕… なんていうのはガソリン車か電池に余裕があるEVだけの話。すでにリーフの航続距離は30kmちょっとまで下がってしまっている。高崎までは30kmをわずかに越える距離。これはダメかも分からんね。


再充電の望みは絶たれた。後はレッカー覚悟で行けるとこまで行くしかない。

残り30km!

カーナビの距離優先って言う機能、始めて使ったかもしれない。これによれば残走行距離と目的地までの距離はほぼ同一。いや3km足りない。思えば30kmぐらい、レッカーを呼んだ方が良かったのかもしれない。しかしこのときの自分は何とか自力で帰ろうという気持ちだった。


高速を降りてからは航続距離が減らなくなった。エネルギーをもっとも無駄にしない走り方は 一度加速したらそのエネルギーを極力殺さないこと。惰性走行時はモーターによる回生充電も御法度。いかに"滑空"するかが重要。どうしても赤信号で停まる時は緩やかにうまく停まってできるだけ電気で回収する。これがセオリーである。


しかし無駄だと分かっていてもナビの画面を切ったり、シートヒーターを切ったり、カーステレオを切ったりしてしまう。無駄なんだけど。ヒーターを切るともう夜なので寒い。強烈に寒い。自分はなんでこんな事をしているんだろう、の境地である。エコラン修行?


ヘッドライトの電気さえ惜しい。しかしこれは絶対に切ることができない。せいぜい信号で停止した時に前の車が居れば切っても良いかなぐらいだ。赤信号はむしろエネルギーを無駄にする敵なので極力避けたい。あー信号恨めしいぞ。

残り15km!

17号に戻ってきた。残り20kmで航続距離は23km。これは努力が実を結んだか? 希望が見えてきたのか? 油断はできないが、頑張った甲斐があったようで少し嬉しかった。そして残り15km。ここでなんとリーフは


−−−km


航続距離の表示をやめてしまったのだ…。
さっきまでの感じなら航続距離3kmを残して到着が可能なはずだが、もう15km以下は予測不能な領域と言うことなのか? 何を信じれば良いんだ? 

そしてでんけつへ…

倉賀野を越え、いすゞの看板が見えてくる。もうゴールまではあとわずかだ。しかしここでリーフはパワーダウン。亀マークが出て最大出力がダウンしてしまう。パワーメーターの半分の所まで表示が消える。ダメなのか? いや、パワーセーブすることで最後の航続距離を稼ぐつもりなのかもしれんし… ちょっとのんきにガンダムSEEDみたいだなー。フェイズシフトダウンかね? とか連想してしまった自分が憎い。


下之城東信号で赤になり。ストップ。そしてついにパワーが1目盛りまでしかでなくなってしまう。これは遅い! 全く流れに乗ることができてない。これで残り6kmぐらいの残量を稼ぐつもりなの?
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と右折レーンに入ったところで赤信号。ブレーキで電力を回収したものの、沈黙。バッテリー赤ランプ点灯である。つまり電欠。残り2.5kmを残してリーフは停まってしまったのだ。
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あー右折レーンふさぐとか最悪最低だ。これは立派な事故である。事故を起こしたと反省しなくてはならない。落ち着いてハザードと室内灯を点ける。頭を下げて後続の車には隣に移ってもらう。レッカーを手配する。これは助手席のグローブボックスに連絡先が書いてある。リーフはサポートプログラムに入っていれば緊急時のレッカー移動も行ってくれるのだ。レンタカーでもOKなの? 突っぱねられたらどうしよう。どきどきしながら電話をかけた。


現在箇所を伝えるのに手間取ってしまった*2が、どうやら30分ぐらいで来てくれるそうだ。一度あちらからかけ直す事になった時、5分ぐらいかかったのだが、その空白の時間の心細さといったら無かった。途中通りがかった人に「私たちに何かできることはないですか?」と声をかけていただいた時はものすごくありがたく感じたとともに申し訳なく思った。


車を借りたお店にも状況報告とお詫びの電話を入れ、待つこと20分ほど*3。救いの手がやってきた。

この車、重いねー!

来たのはフルフラットローダーのレッカー車。ほとんど荷台を平らに地面まで下ろすことができるタイプで、ニュートラルに入れた車を後ろから押せば簡単に荷台に載せることができるのだ。コンパクトカーサイズとのことでウインチは持ってきてないとのこと。「ティーダぐらいの車、手で押せばすぐだよ」とのことだったのだが… バッテリー切れになったリーフも電制シフトやパーキング、ステアリング(ハンドル)は動かすことができる。落ちついてNポジションに入れて、押してもらう。が、


「この車重いねー! バッテリー積んでるからなの?」


申し訳ないので、自分も手伝うことにした。後ろから押す。平らな所ではなんとか動いたリーフだったが、重くて出っ張りが越えられない。強烈に重いぞ!!!! バンパー押して良いものか? ハッチの方が堅いから良いのか? 上のスポイラーはまずい、全然強度がない! あー重い重い重い!!!


後から聞いて分かったことだが、リーフの重量は1520キロもあるそうだ。ティーダが1120kgだから400kgも重い。ミニバンのセレナが1600kgなので、ほぼミニバン級の重さだ。レッカーを頼む時はそのことを伝えた方が良いのかもしれない。四苦八苦の末、積載完了。何度か「サイドブレーキはかけた?」 と確認される。電気制御のパーキングブレーキはかかった感触が全く分からないのが怖いが、一応インジケータは点灯しているので大丈夫なはずだ。
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ドナドナ。最新鋭のEVも電気が無くなれば故障車である。悲しい。

リーフの帰還

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というわけでなんとか帰ることができた。目的地まではあっという間。しかしこのわずかな距離が、リーフの大きな壁となってしまった。手続き的には延長料金を精算して終了。お店の方には「レッカー手配していただいてここまで帰ってきていただいたのでOKです」とやさしく声をかけていただけた。本当に関係者にはご迷惑をおかけした。何度かお詫びをして、家に帰ったのだった。


本日の総走行距離は約300km。EVの1日の走行距離としては頑張りすぎか。限界に挑戦しちゃってたんだなあ。

リーフまとめ

急速充電だけでなく電欠まで体験する羽目になってしまった今回のレンタル。ある意味電気自動車の光と影の部分両方を短時間で体験できたのかもしれない。何度も言うようだが動力性能は全く文句ない。しかし航続距離が厳しいのだ。今回の群馬から東京往復って言うのは無茶だったのは認めるとして、では現在のリーフにとってどのぐらいが適正な移動範囲なのだろう。


カタログスペックではJC08モード 200km。だが、レンタル時の引き渡し条件は80%なのでここで160kmとなる*4。エアコンを使うことを考えて130km弱。往復なら片道60kmぐらい。安全マージンを入れて50kmぐらいだろうか? 急速充電スタンドがなければたったこれだけしか走ることができない。さらに高速を走行してしまうともっと縮まってしまう。路面が凍結するような寒い環境であれば、バッテリーの出力はさらに落ちる。


あれだけ立派な車体と性能が与えられていながら50kmしか走れないのでは宝の持ち腐れである。まあ首都圏なら50kmもあればたいていの場所に行けるし、充電スタンドも無くはない。しかしそれならi-MiEVのようなシティーコミューター然とした軽自動車タイプの方が説得力があるのではないだろうか。後2倍は航続距離が欲しい。充電スタンドも日産のディーラーだけでは困る。夜19時以降や定休日に当たってしまうと途方に暮れることになる。


しっかりと計画を立てて使えば、十分使い物になりそう! と結ぶつもりで東京まで行ったのだが、帰りで予想外の落とし穴にはまってしまった。やはり電気自動車は普通の車の代わりに気軽に使う と言うわけにはいかないことが再確認されてしまった。ただ、それも将来的に至るところで急速充電が可能になったり、航続距離が伸びてくれれば解消することでもあるわけで、日産自動車三菱自動車やその他自治体やインフラ企業のやる気にかかっているんだと思う。


あの静粛性とパワーを実感した自分は、電気自動車の発展に期待している。

*1:自転車の変速ギアだって、軽い方に変えないと重くて走り出せない。それと同じ。

*2:パニクって車のナンバーを間違えたりした

*3:寒くて心細くてかなりきつかった

*4:今回はたまたま100%充電で借りることができたが