【キーボードマシン列伝】ハンドヘルドPCとは何だったのか*1

ハンドヘルドPC(Windows CE搭載)は1998年頃から2001年頃まで存在していたキーボード付きのPDA群である。短い期間ではあったがたくさんのメーカーが参入し、様々な形態のマシンが発売された。W-ZERO3ポメラVAIO type Pなどキーボード付き小型端末が再評価される今、改めて先人たちを振り返ることにしたい。

キーボード付きの電子手帳路線*1 → 【今】携帯電話やWindowsケータイ

PCコンパニオン、つまりパソコンありきでそのデータを持ち出すための子機なのだ。スケジュール・住所録・電子メールを一元管理できるOutlookと同期可能な電子手帳機能。さらにオフィスデータをやりとり可能なPocket Office*2。それに加えて単体での通信機能をサポートしていたのも特徴。メールやPC FAX、Pocket Internet ExplorerによるWeb閲覧なども可能だった。メモリは記憶領域と併せて8M程度。5万円ぐらい。
a_60写真はカシオCASSIOPEIA A-60
しかし背広のポケットに入るようなマシンのプアなキーボード(電子辞書並み)はかえって中途半端で、データの閲覧だけならPalm PilotのようなキーボードなしのPDAの方が軽快でスマートだったこともあり、カシオもよく似たPs/PC(Pocket PC)路線に移行する。元祖ザウルス、本家PalmソニーのCLIE等も併せて一大勢力になっていったが、ザウルスとCLIEの一部を除いてキーボードは無かった。んで、みんなまとめてケータイに飲まれて死にました。


キーボードと言えば、携帯電話の周辺機器としてあったiボード(広末がCMで使ってたの覚えてる?)/ポケットボード/ブラウザボード/ポケットポストペット(我らがDDIポケットならPOCKET・Eだね!)などもすべて廃れた。普通のケータイで小説も書けるとなってはキーボードなど不要か?


しかし少しの間を置いて*3キーボード付きスマートフォンが4キャリアから出ている*4事を考えると、案外まだまだ需要はあったということだろう。今後HTC Touch DiamondiPhoneのようなキーボードなしのスマートフォンと共存していくのか興味はある。

キーボード付きの小型メールマシン → 【今】 ポメラ? ネットブック? VAIO type P?

入力にストレスのないノートパソコンサイズのキーボードにタッチ入力可能なカラー液晶を搭載したPDAがこのグループ。プリインストールソフトにATOKポストペット for CEが入ったマシンは人気を呼んだ。サイズはちょうど今のVAIO type Pと同じぐらいで重さ800g前後。9万円ぐらい。メモリは記憶領域と併せて32M程度。
50pa写真は日立ペルソナ
サイズ的にも価格的にもバッテリ持続時間的にもノートパソコンとの差別化にも成功していて、一回り小さなシグマリオンシリーズなどは最後まで生き延びたハンドヘルドタイプ。しかしメモリが32M程度では*5マルチメディアデータは満足に扱うことは出来ないし、結局出先でストイックに文字入力だけする人種は限られていたということなのだろうか。


このカテゴリーのマシンの歴史は古く、モノクロ液晶なら小型ワープロオアシスポケットDOSベースのモバイルギアなど軽く15年以上さかのぼれる。その割には近年これを代替するようなマシンは出ていないような気がする。VAIO type Pは電池が持たないし、ポメラはストイックすぎる。せめて辞書機能ぐらい欲しい。

安価なモバイルノート路線 → 【今】モバイルノートパソコン、ネットブック

ミニパソコンやモバイルノートが20万円した当時、新品でも13万円程度で入手できた。ディスプレイは7〜8インチのSVGA液晶を搭載。A5サイズで重さも1kg弱だった。ライバルはリブレットやVAIO C1さらにワンサイズ上の505あたり。
10-2-1写真は富士通Inter Top CX310(先祖はワープロのクチ)
しかしソフトは少なく相変わらずOfficeデータもまともに扱えず、マシンは非力でMP3の再生がやっと出来る程度。Flashなど重く大容量化するインターネットの進歩にもついて行けず、モバイルパソコンの値段も下落し続ける一方で存在意義が失われていく。だって、こんななりして初代W-ZERO3より非力なんだよ? そりゃキーボードは付いてるけど。当時のパソコンには真似できなかった瞬間起動・超長時間駆動などのメリットもデメリットを上回れなかったか。非力なのにマルチメディア勝負に持ち込まれたのが敗因ですかね。主なメーカーだったシャープもビクターも富士通もこの後ミニノートパソコンを発売してます。


OSがROMに焼き付けてあって再インストール不要というのは家電的で便利だった。毎月のようにセキュリティアップデートを繰り返すWindowsには無理な相談か。しかしこれからのクラウドコンピューティング時代、このような軽いハードウェアのマシンもいずれ復権する気がする。常時接続ありきで重い処理はネットワークの向こうにまかせるマシン。ケータイと違うのはインタフェース(キーボード・ディスプレイ)がリッチな点。そういう意味でNECのLuiはその先駆けなのかもね*6NECは感覚が鋭すぎるんだきっと。

*1:こいつらのさらに祖先HP200LXと闇に葬られたモルフィーワンについては私は門外漢なのでコメントは控える。PSIONも。グーグル先生に聞こう!

*2:互換性は非常に悪かったが

*3:5年ぐらい空いた印象はあるが

*4:これらもWindows Mobile = CEベースなので、Pocket PCの直系の子孫になる。またCEかよ、とちょっと思った。

*5:当然みんなCFで容量を増やしてたけど、高かったよCFは

*6:ちなみに今回も組み込みOSとしてWindows CEを搭載している。ユーザーにシステム領域を一切さわらせてくれないけど!